多岐に渡る活動でBMXフリースタイルを盛り上げるJFBF(全日本フリースタイルBMX連盟)。その理事長であり、超ベテランBMXライダーでもある出口さん(ニックネームDegoo /デグーさん)に、あんなことやこんなことまでぶっちゃけた取材をさせていただいた超ロングインタビュー。
第2回は、JFBF設立に至った経緯から、設立当初の話。そして、少し前にストリート界隈をざわつかせた、あの噂にも迫りました。
第1回はこちら
”乗れる理事長”の波乱万丈BMXヒストリーに迫る|JFBF出口理事長ロングインタビュー 1/3
自転車競技界のルールを知り、奔走した2015年頃
81BMX:これまではデグーさんのBMX人生についてお伺いしてきましたが、そんな波乱万丈なBMX人生を送ってきたデグーさんが、その後JFBF設立に至った経緯を教えていただけますか?
出口さん:元々は、連盟を作るっていうイメージはなくて。ただ、2008年の北京オリンピックの時にBMXレースが正式種目に採用されて、その時に、近いうちにフリースタイルもなるんじゃないかって、まぁその時は「フリースタイル」って呼んでたわけではないけど、パークとか、その辺もなるんじゃないかなって思ってて。そんな噂もチラホラ聞いてたんだよね。
それで、その時オリンピックに出場したGAN(阪本章史さん)に聞いてみた。あいつももしかしたら知ってたのかもしれないけど、守秘義務もあっただろうし、どうなんだろうね、くらいの返事で。
JOCにも電話して聞いたんだけど、同じく、どうなんですかね、くらいの回答で。まあそんなもんか、と諦めてて。
とはいえ、JBMXF(一般社団法人全日本BMX連盟)っていうレースの団体が少し情報を持ってたようで。
その時のJBMXFフリースタイル担当は当時i-path(アイパス=当時人気を博していたシューズブランド)をやってた松永くんとかだったんだけど、俺らとはまた別のところで独自で動きはじめてて。だけどスタッフはレース上がりのライダーが多かったのもあって、フリースタイルのことまで上手く回しきれなかったみたいで。
その時、広島のしまやん(プロBMXレーサー島田 遼くんのお父さん)がJBMXFにいたから、俺を紹介してくれて、JBMXFの中にフリースタイル委員会を作ろうってなったんだよね。いつになるかはわからないけどオリンピックを見据えて、やっといた方がいいだろうってことで。世界的にも一番早く取り入れたのかなと思ってる。
だけどやっぱりレース主体でやってきた連盟だから、上手くいかないことも多くて。新参者の俺らの主張もどうしても通りにくかったし。
それでも一度、JBMXFのフリースタイル委員会として初めて、プレ大会という形で神戸のみなとの森で大会をやったんだよね。2015年の11月だったかな。
大会自体はみんな来てくれて大盛り上がりだったんだけど、組織として上手く協力しながらできたかと言ったら、正直そうではなかった。
それが年末のことだったのもあって、翌年からは、独立したいな、独立してフリースタイルのための連盟を作ったほうが、お互いのために良いんじゃないかって思いはじめて。
それで、どうしようかなって考えていた時に、JBMXFをはじめとする色々な自転車競技連盟は、JCF(日本自転車競技連盟)という団体と繋がっていて、そもそもJCFが一番上にあり、そこに色々なルールがあることを知ったんだよね。
例えば、JCFとの繋がりがない限り、全日本選手権という名前の大会もできないし、もし今後BMXフリースタイルの世界選手権が行われたとしても、世界選手権はJCFのさらに上の機関であるUCI(Union Cycliste Internationale)が取り仕切っているから、そこでもJCFと繋がってないと行くことができないっていうルールがあって。
初めは正直なところ、ふざけんなって思って(笑)そんなのなくても俺ら勝手に世界行くし、とか思ってて。それでやってはみたけど色々な障害があって、やっぱりそのルールに従うのが近道だってのを実感して。
JCFはまだBMXフリースタイルのことをあまり重要視してくれてなくて、俺らのことも相手にしてくれず、なかなかコンタクトも取れない状況で。
本当に大変だったけど色々と試行錯誤した結果、とある秘策が功を奏してやっと話を聞いていただけることになって、東京に行ったんだよね。
今思い返すとノックするのすら重く感じるようなドアを入っていって、一見して偉い人ってわかるような人たちがずらーっと並んでる中に通されて。
僕たちはこうしていきたい、そこにJCFの直接の協力をいただけませんか?って。
きちんと話したら理解してもらえて、面白いっても言ってもらえて。まだオリンピックは決まっていないし、全日本もやってないけど、一緒にやって行きませんか?って言ってもらえたから、そこでJFBFを立ち上げて、JCFの傘下という訳ではないんだけど、関連団体としてやっていくことになった。
それで、その次からJFBF主催の大会ってことで、Japan Cupを立ち上げたんだよね。
「BMX界の生贄」とも言われた、批判だらけのスタート
出口さん:Japan Cupの1回目、2016年の姫路大会の1ヶ月前に初めて、今までトシオが1人で回っていたFISEの中国大会に、リムとぶーやん(中村輪夢くんのお父さんで、Japanチームのメカニックを務める中村辰司さん)と4人で一緒に行ったんだけど、涙が止まらなかった。
トシオは今までこんなところで1人で戦ってたんだ、って。本当にすごい世界だったし、言葉は通じないし。今さらだし、遅くなって申し訳ないけど、支えなければって思って。
それで、姫路大会の時にみんなに、トシオがやってきたことをみんな見るべきだ、こんな小さな島国の中だけで盛り上がるのではなく、世界で一緒に戦っていきましょう、って話をさせてもらったんだけど、その時実は、俺らはフリースタイルがオリンピックになるってことを既に知ってた。
トシオと一緒に色々な会議に出る中で教えてもらって、2020年から、つまり、日本で開催されるオリンピックからになるから準備をはじめてほしい。関係者だけには伝えておいてって言われてて。
それで姫路大会の時にも何人か主要なメンバーには伝えたけど、その時は全く信じてもらえなくて。そんな、なる訳ないだろってボロカスに言われたりもして、悔しくて泣いたな。
その後もJFBFとして、オリンピックを見据えた色々な活動をしてきたけど、事情を知らない人から見たら出口は一体何をやっているんだという感じだっただろうし、SNSで名指しで叩かれたりもしょっちゅうだった。でもオリンピックのことはまだ言えないし。
もう、みんなから嫌われてもいいから我を貫こうって思ったり。でも何人かは支えてくれる人がいて、なんとか頑張れてたのが2016年かな。今では、「BMX界の生贄」とか言われたりもする。(笑)
高木聖雄くん:本当にそうだったと思います。あの頃ってまだ、え?ペルージャカップとEndpointと色んな地域の草大会みたいのとJFBFの大会と何が違うの?もっとノリで行こうよイエーイみたいな感じで。
日本だけでなく、ワールドカップでもそういう雰囲気はあって、何その入場の時のその感じ、とか、ジャパンジャージ?アメリカUSA?何それだっさ、そんなのBMXじゃない、とか。
そんな時だったし、JFBFの活動的にも手が回らないことも本当にたくさんあったと思うし。でも突っ込む人はどうしてもそこを突くじゃないですか。姫路の大会でもたくさん言われてましたよね。
今でこそああやって、岡山の市役所の前にモニター立てて写真出てバナードーンって貼って表彰式ー!ってTVにも映って、世の中に認められてますけど、それはここ2〜3年ですよね。その前の頃は批判ばっかりでした。
高木聖雄くん:あと僕の印象だと、全日本選手権、とか、協会を作ろう、とかって思った方は出口さんの前にもいっぱい色んな人がいたって思ってるんですよ。色んな先輩ライダーたちが、やろうと思っている、やりたいって言っていたのを聞いてきたし、立ち上げた時はトシオもぜひ協力してねって言われたこともありました。
みんなそういう熱い想いがあって、でもやっぱり色々と大変だし、やり切れた人がその時点ではいなかった。だから出口さんへの批判もその名残というか。
出口も今はそうしているけどきっと無理だから、お前も昔はそんなんじゃなかったじゃないか、固いこと言わないで今を楽しもうよ、みたいな感じはあったんだと思います。
この子たちが輝ける場所を俺は一生作り続ける、って誓った
出口さん:はじめてやった姫路の大会は本当に印象に残ってて。今思えば作ったランプのアールの角度も良くなかったし、なんじゃこりゃって感じだったけど、何ヶ月もかけて自分たちで木を切って、運んで、組んで。
エントリーフィーをもらうのも、正直どうなんだって思いながらも、5,000円だったかな、それでもみんな、高い高いって言いながら出てくれてすごく盛り上がったし。やったら片付けなきゃいけなくて、死ぬんじゃないかって思うくらいそれも大変だったけど。
その次の年は、エントリーを初めて登録制にしようってなって。それはなぜかというと、ライダーに保険をかけたかったから。それまでの大会は保険をかけてなくて、怪我したら自分持ちってのが当たり前だったんだけどそれが納得できなくて。
今も付き合っている保険屋さんが色々便宜をはかってくれて、登録制にすれば、年間3回大会をしたとして、登録費で保険料が賄えることがわかって。
JCF絡みの大会だからJCFへの登録も必要なんだけど、JCFに登録すれば、練習の時の怪我も補償してもらえる可能性があるというのもわかって。
両方入って1万円くらいだったけど、それ以上のものを得られるから、絶対入ってもらうべきだって思ったんだよね。
その時はそれを上手く説明できなくて、1万円って言ったらそれまでの大会のエントリーフィーからしたらものすごく高く感じるだろうし批判もたくさんあったんだけど。でも納得して登録してもらいたいと思ってた。
(※2021年度からは、大会出場に必要なライセンスはJCFライセンスに一元化されました。)
その、登録制にしてはじめての大会が、2017年の5月に千葉の市原でやったJapan Cupで、その時のメンバーで撮った集合写真は今も待ち受けにしてるし、絶対変えられない。
批判も多かった中支えてくれた人たちで、この子たちが輝ける場所を俺は一生作り続ける、って誓った。
出口さん:その後、東京に事務所を構えようとしたこともあったけど、国の政策で地方創生ってのが流行ってたのもあり、岡山はASPOもあったし色々とやりやすい街だから、このまま岡山でやっていくのもアリかなってことで、今に至る、という感じかな。
現場が好きなんだよね。海外遠征なんかは、一回行くと2週間とか留守にしてしまうし、それによって連盟の仕事も滞ってしまうこともあるから1日24時間じゃ足りないくらいで。みんなには忙しかったら行かなくてもいいんですよ、とも言われるんだけど、その場にいられないと自分が嫌なんだよね。任せればいいものを任せられない。(笑)
神様みたいな人間になりたい。(笑)
81BMX:BMXフリースタイルでは初の連盟となり、色々苦労されてきたということはこれまでのお話の中でたくさん教えていただけましたが、現在進行系で苦労されていることなどはありますか?
出口さん:ありがたいことに、批判は減ってきたかな。あまり色々言われなくなってきた。
今の悩みは時間が足りないってのはもちろんあるんだけど、圧倒的にお金が足りない。あればあるだけライダーのために使ってあげたいし、大会のクオリティを上げてあげたいし、あればあるほど良いものではあるよね。
やりたい事はいっぱいあるけど、今あるお金ではできないってのはある。お金お金言うとまた叩かれるかもしれないけど。(笑)
例えば野球とかサッカーとか、メジャースポーツと言われるようなスポーツのスポンサーをしている企業の方なんかには、そんなお金じゃ回せないだろ、ってよく言われるんだけど、それはライダーが我慢してくれてるのと、まだまだ俺らが次元が低いんだろうなってのは感じてる。
自分自身が苦労しているのは、企業であったり団体であったりの重役にいる年配の方々を納得させる力がまだまだ足りないってことかな。
60代、70代のそういった方々からしたら、44歳なんてガキ中のガキらしくて。俺もこういう性格だから、ちょっと強く言い返して喧嘩っぽくなってしまったりすることもあるし。
たまに、全てを聞いてくれる神様みたいな人もいるんだけどね。自分も早くそんな神様みたいな人間になりたい。(笑)
一同:どうするそれ見出しになったら。「出口理事長インタビュー、俺は神様になりたい」(笑)
81BMX:大きい文字で書いときますね。(笑)
半分本当で半分勘違い?ストリートのあの話。
81BMX:神様に免じて、ちょっと聞きづらいのですがぶっちゃけて聞かせていただきます。出口さんが日本のBMXライダーに対して「(リアル)ストリートをするな」という発言をしたらしい、という噂が流れていて、一部で若干不信感を持たれてしまっているという事実もあるのですが、その発言は本当にあったのでしょうか?
出口さん:したと思うよ。強化指定選手や強化育成選手に対してだけど。強化指定選手には当然言うべきことであって、まぁ、俺もストリートやってた時期もあるしすごく心苦しいことではあるんだけど。
強化指定選手はオリンピックを目指している訳でしょ。オリンピックに出たいから、世界選手権で優勝したいから、強化指定選手になっている訳だし、当然全日本でもトップでいるのも当たり前。
じゃあその強化指定選手たちが、リアルストリートをやりました、ウォールライドして、壁に穴が開きました。日本トップの、オリンピックを目指している人たちが、人の壁を壊したら大問題だよね、だったらやらなきゃいいんじゃない?と言う発想。
道路交通法違反ってのもあるし、器物破損ってのもあるし。警察沙汰になる可能性がある。それでもリアルストリートをしたいんだったら強化指定選手をやめる、オリンピックを目指したいならリアルストリートをしない、のどっちかにするべきだと思う。強化指定選手や強化育成選手にはそれを伝えてる。
81BMX:今回これを聞きたかったのは、この噂の流れで、出口さんが日本のBMX界からストリートを排除しようとしているらしいという話を聞いたりしたので、そのあたりの真相を伺いたかったからなのですが、その点についてはいかがですか?
これは複雑で、どうしてもグレーゾーンになってしまうものだとは思うのですが、JFBF的にはストリートは完全に排除したいもの、という位置付けなのでしょうか?
出口さん:そもそもノーブレーキで走ること自体が法律違反だから、いち大人としてはダメだよって言うこともあるかもしれない。
ただ、色々理解した上でBMXをやっているライダー全員に、お前ストリートすんなよ、とは言わないし。まぁこんなことを言うと、出口が暗黙の了解でOK出したって言われてしまうかもしれないけど、やるなら自己責任だよね。
ストリートライディングの文化は文化であるし、それを否定するつもりは全くない。ただ、JFBFが抱えている選手というか、世界を目指しているライダー達、つまり強化指定選手や強化育成選手に関しては、俺がしっかり責任を持ちたいから、その分強くも言う。
ミナトとリムのオリンピック出場が決まってます、そんな中で強化指定選手がストリートをしました、物を壊しました、人を傷つけました、ニュースになりました、で、誰の足を引っ張ることになるかわかるか?そうなるくらいなら、強化指定選手をやめるか、チームとしてその2人を支えるという意味でも、ストリートはやめるか、どちらかにしようよ、ということだよね。
ミナトとリムのためってだけじゃなく、もしそういった問題が起きてしまったら、そのライダーには強化指定選手を辞めてもらうか、改めてもらうかしかできない。だから、そういう、自分の首を絞めるようなことはしなくても良いんじゃない?とも伝えてる。結局首が絞まるのは自分だからね。
どちらにするかはライダーが決めること。それで強化指定選手を外れたとして、ではやってもいいよ、とは言えないけど、あとは自己責任で、という感じかな。
81BMX:なるほど。聞いてた感じとちょっと違ってたな、という印象を受けました。そういう話なら特に誰も気分を害すようなことではない気はしますね。「BMXのあり方」的な話になってくるとまた別で難しい問題だし、人それぞれだと思いますが。
この問題、今までグレーゾーンでなんとかうまいことやってきたのがいきなり表面化してしまったのは、良くも悪くもオリンピックの影響が一つの理由としてありますよね。
スケートも、オリンピックに出るスケーターは公道でプッシュしてはいけない、とか?色々決まりがあるというような話を聞いたりしますが、スケートのほうはどうしてるんでしょうね?
出口さん:スケートの協会であるAJSAとも仲が良いので話したこともあるけど、やっぱり同じかな。オリンピック目指す子には注意はするけど、そういう文化ももちろんあるし、そうやって濁すしかないよねって。うちもその濁し方しかないと思ってる。
俺はBMXはジャンル問わず全部好きだから、もちろんストリートも好きだし。見るのも楽しいし、自分も昔やってたから、あの空間が楽しいってのもわかってる。だけど、今は違う。
リムに関してはストリートをやらせても世界トップだし、日本人の中でもずば抜けて上手いと思ってる。そういう奴が世界で、オリンピックで金メダルを目指してるんだから、パークだストリートだと言わずみんな暖かく見守ってほしいとは思ってる。
リムにも、オリンピックが正式種目になることが決まってそれを目指すってなった時に、ストリートは禁止な、って伝えた。その時公開寸前だったリムのストリートの映像があったんだけど、タイミング的にお蔵入りにしなければならなくて。それでもあいつ、「わかりました。」って。
めちゃくちゃやばい映像だったんだけど、今も世に出ていない。俺はそれをすごくリスペクトしてるし、まだ15歳そこそこの子どもだったリムがやったんだから、オリンピック目指すんだったらみんな当然そうするべきかなとは思う。
では、「ストリートをしない」誓約書の噂は??
81BMX:もうひとつ、「JFBFの大会は登録制で、その登録の際に、(リアル)ストリートをしない、という誓約書のようなものを書かされるらしい」という噂も聞いたことがあって、大会に出たい気持ちはあるけどストリートもやりたいからJFBFの大会には出ないと言っているライダーもいるらしいのですが、そのようなものはあるのでしょうか?
出口さん:それは強化指定選手の誓約書だね。登録選手の誓約書ってものはないな。
強化指定選手に関してはさっき話した通りだけど、その他のライダーに関しては、ストリートをやってたとしても俺が注意することではないと思うし。
選手登録のルールとして、「公道でのBMX走行で器物損壊行為など確認された場合や日本の法律に違反した場合は選手登録を無効とすることがある。」という一文はあるし、Webサイトにも書いてあるけど、誓約書ではないね。
ちなみにその一文は、誰かを傷つけたとか、大きな問題になってしまった場合のことを考えて入れていて。
万が一、社会のルールとしてある程度の制裁を加えなくてはならないような問題を起こしてしまった時に、連盟がワンクッションになれればいいなって思いもある。例えば何かを壊しました、人に怪我をさせてしまいました、とか、何かあって連盟にクレームが来たときに、申し訳ありません、そのライダーの選手登録を剥奪します、で警察沙汰にならなくて済んだらそのほうがいいじゃん。
状況にもよるけど、ある程度は守ってあげることもできるのかな、とは思ってる。
それにそう書いておくことによって、対外的にもしっかり考えてますっていう意思表示にもなって、一般の人から見たBMXライダーの格みたいなものを少しは上げられるかなってのもある。
ストリートやっててもJFBFの大会には出られる
81BMX:ということは、別にストリートやっててもJFBFの大会には出られる、ってことですね?
出口さん:出たいって思ってくれてるならぜひ出てほしい!初期の頃はストリートライダーもいっぱい出てたしね。ストリートクラスがあったってのもあるけど。もちろんそれを復活させてもいいし。
現状、Japan Cupや全日本のパークライダーのレベルがびっくりするくらい上がっているから、色んなライダーに楽しんでもらうために、例えば30オーバーとか40オーバーとか、新しいクラスを作って、年間ランキングもなしの楽しめるクラスを作ろうとか、そういう案はもう既に出てる。
今までのスケジュールではできないから、日にちを増やしてできればなって思ってる。
ストリートするなって、言った言わないは正直どうでも良くて、それは強化指定選手たちへの、自分たちを守るための対策ですよ、日本の法律に合ったルールの中で、オリンピックを目指しましょう、ということだね。捕まったら君が悪い。
だってさ、その辺でミナトがノーブレーキで走ってて、捕まって、え!オリンピック選手の大池さんじゃないですか!?とか絶対嫌だろ(笑)そんなしょうもないことないわ(笑)
別にオリンピック目指してないライダーにストリートやるなとは言ってない。
さっきも言ったけど、俺はBMX全部好きだし、SNS見てれば国内海外問わずストリートの映像だって出てくるけど、すごいもんはすごいし、すげーなー、かっこいいなーって見てたりすることもあるよ。いいねしたくても立場上できないけど。
としお理論「不良の美学」とは
高木聖雄くん:人数が少ない、業界が小さいと、みんな輪になって楽しいんですよね。みんなファミリーみたいな。でも、増えてくることによって色んな意見が出てきて、賛成派反対派どっちでもない派とかで討論、ディスカッションができる。これは悩みではあるけど別の意味ではすごく嬉しいことだよねって話を最近良くしてます。
僕からすると、僕たち強化指定選手だったりJFBFがこういう路線でやっていることで、それに不満を持つアンダーグラウンドなみんなも絶対恩恵を受けてるはずなんです。
学校で、制服のシャツを入れなさい、ボタン止めなさい、それがルールですよって言われて、そんなの知らねえよ、俺はボタン外すぜ…、それが不良の美学じゃないですか。それがどんな格好でもいいよって言われたら、何もその美学に触れないですよね。
それと同じで、アンダーグラウンドな感じで、遊びからきているストリート、その感じがかっこ良くて好きだなって思ってるライダーたちが、当たりどころとして見つけたのがJFBFで、ストリートすんな?何言ってんだ。は?誓約書?ダセーよって。そう言えてることに感謝しないと。
一同:爆笑
81BMX:その理論すごい。そこまで考えたことなかった(笑)
高木聖雄くん:さっきの学校の話がまさにそうなんですよ。ボタン閉めろよシャツ入れろよっていうから、ボタン開けてシャツ出してかっこいい訳じゃないですか。俺ボタン閉めねえし、シャツ出すし、金髪だしって。
それが、金髪OKパーマOK、タバコ吸ってもOKバイクも乗ってこいよって学校だったら、その不良のかっこよさは目立たないってことです。
ストリートライダーたちが、ギャングスタで、アンダーグラウンドで、カッコよくいられるのは、俺たちがピシッとして、スーツとか、ユニフォームとか着てやってるから。こっちの恩恵も実は受けてるんだってすごく思うんです。
アンダーグラウンド、俺らも憧れてるしかっこいいと思うんです。俺らが真面目だとしたら、正反対のアンダーグラウンド。いいなー、アンダーグラウンドかっこいいなーって思うんです。でもそれは、大きく言っちゃうと、君たちが輝いてるのは俺たちのおかげでもあるんだよ、っても思います。
ひと昔前までは、なんでもアリだったし業界も小さかったからそうではなかったけど、今こんな状態になってるなんて、BMX業界が大きくなって盛り上がっている証拠だよなって。
反論できる相手がいることで、かっこよさがさらに引き立ってるんだよって。アンダーグラウンドなみんなはアンダーグラウンドでいて欲しいから、表立ってそれを認めてくれとは思わないけど、心の中で少しは「そうやな」って思ってくれたらいいな、とは思いますね。
出口さん:まぁ実際、オリンピックの正式種目になったことで露出も増えて知名度が上がってきているから、仕事も増えてるだろうしね。例えば雑誌やTVでBMXの特集をしたい、リムやミナトは呼べないけど、地元のライダーを呼ぼうってなって誰かが呼ばれてそこにギャラが発生しているかもしれないし。オリンピック組織委員会の仕事もそうだし。そういった意味でも色々な恩恵はあるだろうね。
公園はセーフなのかアウトなのか
81BMX:単純にストリートが好き、ストリートが一番!というライダーもいれは、パークが近くに無いからストリートで、というライダーもいると思います。例えば公道ではなく、BMXが禁止されていない公園や広い場所などで、他の方の迷惑にならないように乗るのはセーフ?だと思いますか?
出口さん:その場所の管理者次第だから、俺が乗ってもいいよ、とは言えないけど、そこをBMXに乗れるような環境にするための努力をしたらどうかな?とは思う。そしてその手伝いならできる。
今までやってきたノウハウもあるし、必要であれば可能な限り現地に行くし。何かをやろうとするライダーがいるのであれば、そこに手を貸すのがJFBFの役目だと思ってる。
実際そういう相談が来て話をしたこともあるし、一般の方からも、あそこでBMX乗っている人がいて迷惑なんだけどどうにかしてください、みたいな連絡が来て、話をして乗れる場所を作ったりとかしたこともあるよ。そこは相談してもらえれば何らかの手助けはできるはず。
次回は最終回。テーマはJFBFの活動について。”強化指定選手”や”公式戦”の基準をはじめ、パーク設立の話、BMX禁止パークについての見解、そして今後のことについてもお聞きしたインタビューと、ライトパークのセクションやライディング画像をたくさんお届けします。