寒河江スケートパーク改築でボウルが無くなる!?BMXライダーのご意見募集中

先日、SAGAE BMX JAMのレポートを公開したばかりですが、ショッキングなニュースが届きました。寒河江スケートパークの老朽化そして利用者数減少などの問題から、パークを改築する計画が進んでいるとのこと。
それだけ聞くと、「確かに14年も経ってかなりボロボロになってきたもんな〜。リフレッシュしたパーク楽しみ!」と喜んでしまいそうになりますが、ボウルエリアにストリートセクションを造る計画が進行中で、22日にローカルスケーター、ライダーを呼んでの意見交換会が行われるそうなんです。

つまりあの、寒河江名物のボウルが無くなってしまうかもしれないのです。

ボウルって何?ストリートセクションって何?な方のために簡単にご説明すると、どちらもBMXやスケートボードで遊べるパークの形状の一種で、ボウルとは、お椀(ボウル)状になっているパークのことを言い(プールと呼ぶことも。なんでプール?と思ったら Lords of Dogtown というスケートボードの映画を見ると全てがわかります。)、ストリートセクションとは、街中の縁石や階段の手すりや坂、壁などを模したパークのことを指します。
参考に、東京五輪の公式サイト スケートボードの競技紹介にあった説明も記載しておきます。

※東京五輪のスケートボードの「パーク」種目はボウル形状のパークで行われるため、引用内の「パーク」は「ボウル」のことを説明しています。

ストリート
街にあるような階段や手すり、縁石やベンチ、壁や坂道などを模した直線的なセクション(構造物)を配したコースで行われる。

パーク
大きな皿や深いお椀をいくつも組み合わせたような、複雑な形をした窪地状のコースで行われるパーク競技。直線的なセクションが中心のストリートに対して、パークはアール(湾曲)がついた曲線的な形状だ。

TOKYO2020 スケートボード 競技紹介

意見交換会の開催案内で、改築計画の概要やざっくりした経緯が公開されています

寒河江スケートパーク公式Instagramより

改築の内容は以下の通り。

1:「滑らかな滑走面」の整備・補修(手前のエリア)
2:本格的なストリートコースの設置(奥のボウルエリア)
3:「パーク(プール)」の設置(手前のエリア向かって左側)

ということで、多くのBMXライダーに愛されているボウルエリアに、ストリートセクションが造られる計画になっています。
手前のエリア左に「パーク(プール)」の設置とありますので、新たなボウルができるかとは思いますが、面積を見る限りでは規模はかなり縮小されそうです。

案内文にはこのような記載が。一部抜粋させていただきました。

このたび、東京オリンピックにおいてスケートボードが正式種目になり、競技スポーツとして需要が高まってきたことや、寒河江市で実施を活性化させている交流イベントやスケートボード教室の利用状況を考慮し、施設の修繕と一部コースの大規模な改築を検討いたしました。

寒河江スケートパーク公式Instagramに掲載の
”寒河江スケートパーク改築意見交換会の開催について”より抜粋

この計画に至った詳細な経緯や、地元スケーターのみなさんにとっての寒河江ボウルの存在がどんなものかなど、現時点でははっきりとわからないことが多く、まだ何とも言えないところもあります。

ですが、少なくとも寒河江のボウルが多くのBMXライダーに愛されていて、かつ、様々な観点から見て日本にとって貴重なものである、ということは間違いないはず。
このまま黙って無くしてしまって良いのだろうか、せっかく設けていただけた意見交換会に向け、参加予定のBMXライダーのためにサポートできることはないだろうか、と居ても立っても居られなくなり急遽この記事を書いています。

日本にほとんど無いハイクオリティなボウルの重要性を、競技としてのBMX視点から考える

BMXも同じく東京五輪の正式種目になっているものの案内文にBMXの記載が無い、というのがなんとも悲しいところではありますが、それ以上に気になったのが五輪のスケートボードを意識しているような記載がありつつもボウルの規模を縮小する計画になっているという点。

というのも五輪のスケートボードは「パーク」と「ストリート」の2種目あり、そのうち「パーク」は冒頭でも記載したように、ボウルを使って行われるのです。
※東京五輪のBMXフリースタイル・パークはボウル形状ではないパークで行われます。

五輪のスケートボード「ストリート」のために充実したストリートセクションを、というのはわかりますが、それなら手前側のエリアを改築してボウルは残す、という選択肢もあるのでは?詳細な経緯を知らない立場としてはそんな風にも思ってしまいますが、何かそうせざるを得ない理由があったのでしょうか。

五輪だけでなくボウルを使った世界大会は数多く、わたしが撮影に行ったことのある大会だけで見てもX GAMESのBMXとスケートボードの「パーク」(別途ストリートもあり)、VANS BMX PRO CUP(BMX)、VANS PARK SERIES(スケートボード)がボウルの大会でした。

X GAMES のボウルでカメラ目線のKevinPeraza Photo:Naoki Gaman

たくさんの大きな国際大会でボウル形状のパークが採用されているにも関わらず、深さ、大きさなどが世界大会規模のボウルは日本にはまだまだ少なく、その貴重なボウルのひとつが寒河江のボウルなのです。

五輪の影響か、選考大会が行われている鵠沼のボウルをはじめとした世界大会規模のボウルが近年少しずつオープンしていますが、寒河江以外の場所ではBMXでのライディングが禁止されています。(なぜ禁止なのか、交渉の余地はないのか、などについては調査中)
よって、BMXで乗れる世界大会規模のボウルとして考えると現時点では寒河江のみ、と言っても過言ではないでしょう。

ボウルに乗り慣れているか否かでスタートラインに大きな差が出る

ボウル形状のパークで行われる様々な世界大会で撮影をしてきましたが、そこで目の当たりにしたのが、ボウルが豊富にある国と無い国のライダーの、基本的なスキルの差です。

ボウル大国オーストラリアのJosh Dove 17歳にしてこのスタイルは、ボウルに慣れ親しんでいるからこそ。 Photo:Naoki Gaman

普段からボウルに乗り慣れている、ボウルが豊富な国のライダーは、大会会場のボウルもすぐに乗りこなして練習開始直後からかなり攻めたライディングを見せつけます。トリックのクオリティもさることながら、速さ、ライン…走る音からして違います。

ロードトリップ中に寄ったコロラドのEagle County Skateparkにて。アメリカにはそこかしこにボウルがあり、初めて来たボウルでもサクッと乗りこなしてしまうライダーが数え切れないくらいいる。
Rider:Dani Lightningbolt Photo:Naoki Gaman

それに対しボウルに乗り慣れていない、ボウルが少ない国のライダーは、会場のボウルに慣れるだけでまず一苦労。
中村輪夢くんレベルまで行くとそれでもしっかり合わせて行って最後は表彰台に(初出場のX GAMESでシルバーメダル!)、なんて偉業を成し遂げてしまったりもしますが、このスタートラインの差はライダーにとって大きな負担となってしまうことは間違いないはず。

寒河江のボウルを無くしてしまうどころか、むしろ日本にボウルがどんどん増えて欲しい、と思うのはわたしだけではないはずです。

ボウルとストリートセクションの共存、初心者や子どもへの配慮、これらの問題は解決可能と考えています

現状、なぜボウルをストリートセクションに改築することになったのか、その理由については噂レベルでしか情報が入ってきておらず、意見交換会で明らかになるだろう、としか言えません。

今ある情報で考えられる理由としては…
・五輪のスケートボード「ストリート」のため?
・難易度が高いため、実は普段のボウル利用者が少ないのかも?
・もっとキッズや初心者に優しいパークにするため?
・予算の関係?
ざっくりこのあたりでしょうか。

想像で話を進めても仕方がありませんが、仮にもしそうだとしたら、海外で見てきたパークは、予算以外の問題は設計で解決できているところが多い印象でしたので、そこだけお伝えしたいと思います。

例えば先程載せた写真のEagle County Skateparkは、2つのボウルに挟まれる形でかなりしっかりしたストリートセクションがありました。

先に紹介した写真と同じEagle County Skatepark。奥に見えるのは逆サイドにあった別のボウル。
Photo:Naoki Gaman
Eagle County Skateparkの中央部分。
Rider:Tyler Mccarley Photo:Naoki Gaman
こちらもEagle County Skateparkの中央部分。
Rider:winestaine  Photo:Naoki Gaman

ここは設計が本当に秀逸で、下手なわたしでも楽しめるセクションもたくさんありました。ボウルは深くロールイン(BMXに乗ったまま降りて中に入ること。スケートボードで言うドロップイン。ほぼ直角の入り口なので、慣れていないと恐怖でしかない。)で入ることはできませんでしたが、それを解決する「ロールインできない人のための入り口」を、他のパークで何度も見たのでそちらもご紹介。

Linda Vista Skate Park
Rider:Jesse Gregory Photo:Naoki Gaman

この写真右上のほうにある、一部だけ入り口が丸くなっている部分がそれです。キッズスケーターが待機していますね。
アメリカのボウルではこれを本当によく見ました。ちょっとだけ勇気を出せば降りられて、侵入部分以外はロールインした時と同じ形状になっているこの入り口。初めて見た時は感動さえ覚えたものです。

ちなみにこちらのLinda Vista Skate Parkも、ボウルに挟まれる形でかなり大規模なストリートセクションがありました。

Linda Vista Skate Parkの広大なストリートセクション(写っている範囲で3分の1くらい)
Rider:Rim Nakamura Photo:Naoki Gaman
先程のボウルとストリートセクションを挟んで反対側にあるボウル。かなりの深さだが、ここにもあの入り口が。写真右奥のストリートセクションがあるエリアからも回り込む形でロールインなしでボウルにアプローチできる。 Photo:Naoki Gaman
ちなみにその後ろにも小さいボウル。昼間は全てのボウルがスケーターに大人気でかなり盛り上がっていた。 Photo:Naoki Gaman

寒河江の手前のエリアや東京都八王子市戸吹スポーツ公園のプラネットパーク、岐阜県の中津川公園スケートパークなど、バンクイン(坂を下って入ること)ができるようになっているボウルもいくつかあります。
それもいいのですが、バンクとアールでは感覚がやはり違うもの。深めのボウルにこの入り口があると、みんながプチチャレンジできて少しずつレベルアップできるのではないかと思います。そのためか、アメリカでは相当数のキッズライダー、キッズスケーターから初心者と思われる人まで、大小様々なボウルを楽しんでいました。

日本でこれに近いものと言えば、埼玉県にある驚きクオリティの手作りパーク「スケートパークコバヤシ」の「穴(正式名称わからず)」くらいでしょうか。

左奥に写っている「穴」をくぐってボウルに入ることができる。 Rider:くどう Photo:Naoki Gaman
裏から見るとこんな感じ。キッズ達がここからエントリーして楽しんでいました。大人には若干狭くてちょっと難しさはあるかも?  Photo:Naoki Gaman

日本では他にはまだ見たことがありませんが、どこかにあったらぜひ教えてください!(乗りたいです。)

競技としてだけではなく、多くのライダーに愛されるボウル

ボウルならではのピースフルな雰囲気。 Photo:Naoki Gaman

先日のレポートでもご紹介した通り、SAGAE BMX JAM 2020の当日は岡山でも全日本選手権が行われていました。

競技としてBMXを頑張っているライダーたちは皆岡山に行っていたにもかかわらず、寒河江にもあれだけの数のライダーが集まったのは、BMXには様々な楽しみ方があって、寒河江にはそれだけの魅力があるから。
寒河江の魅力はボウルだけではありませんが、寒河江のボウルを1番の楽しみに集まったライダーは多いはず。

特別何かトリックをしなくても、ただ流しているだけでも気持ちよさを味わえるボウルは、老若男女問わず楽しめるパーク形状と言えます。
競技やスポーツとして頑張っているライダーだけでなく、本当に多くのBMXライダーが、ボウルを愛してやまないのです。

ドイツで行われたVANS BMX PRO CUP でブラジル人ライダーCauan Madona を応援するライダーたち。様々な国のライダーが外国に集まり、お互いをリスペクトして応援しあう様子が、先に紹介したKevin PerazaのInstagramで「 BMX IS FAMILY. 」と表現され、多くの賛同を得ていた。
Photo:Naoki Gaman

色々な意見があるとは思いますが…

寒河江スケートパーク Photo:y_m_d_gram

BMXライダーの中でも色々な意見が出てくると思いますが、寒河江と言えばボウル!年に一度の楽しみ!という方も多いのではないでしょうか。
また来年寒河江で会いましょう!と締めくくった前回のレポート。来年ボウルが無くなっていたら…
わたし個人の意見としては「悲しすぎる」の一言ですが、みなさんはいかがですか?

意見交換会には宮城県のライダーが数名参加するとのことですので、反対、賛成どちらでも、意見を届けたい!という方がもしいたら気軽にご連絡ください。

大前提として、ローカルライダー、ローカルスケーターの意見が最優先されるべき、ということは忘れずに、色々な意見や情報を届けることでしっかりとした意見交換、検討が行われ、できるだけ多くの人にとって納得の行く結果になればと考えています。

ご連絡先
naoki@81bmx.jp
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こちらのレポートもぜひご覧ください。

BMXって本当に最高!と思わず言いたくなるイベント「SAGAE BMX JAM 2020」開催レポート

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また情報アップします! Rider:Hirotaka Oda Photo:Yu-ya