Sponsor US!!日本にもっとBMXで利用できるパークを。ストリートライダーの心の中。

BMXには様々なジャンルがありますが、パーク・ストリートの場合、誰にも迷惑をかけずにじっくり練習するには「スケートパーク」が必要ですよね。
ライダーのプライベートパークや強化施設としてのパークなど、以前に比べると乗る場所は着実に増えて来ていますが、日本国内全体で考えると、誰でも気軽に利用できる公共のパークの数は未だ多くはないのが現状。そんな日本のBMXパーク事情について、東京・渋谷を中心にライディングしているストリートライダー150s-townmasaが、思うところを語ってくれました。

街中で遊んでいる、あの迷惑な自転車乗り達に、どれだけの価値があるかを多くの人は知らない。

BMXという乗り物。ここ数年はフリースタイル・パークという種目が2020年東京五輪の新種目に採用されたことで話題になっているので、聞いたことがある人も多いだろう。
ジャンプして回転したり、空中でハンドルを回したり手すりの上を滑ったりと今流行りのアクションスポーツが出来る自転車である。
その他にも平地でバランスを取りながら回転するなどして技術を競うフラットランドというジャンルがあったり、土で造られた連続ジャンプを飛び技をするダートジャンプや、複数人で一斉にスタートして速さを競うレースもあったり。レースは2008年の北京五輪から正式種目になっている。
スポーツ・競技としてだけでなく、人によって楽しみ方は様々で、その懐は深い。

これから書く話は、既にBMXをやっている人には馴染みのある話であるが、まだ始めていないけど気になっている人はもちろん、始める気はないけどなんとなく気になるって人も、2020年東京五輪に向けての予備知識程度にでも読んでもらえたらと思う。そしてこれが行政や企業の方々の目にとまって、日本にパークが増えるきっかけになれば本望だ。

BMXで遊んだり、練習したりできる「スケートパーク」という施設が日本には不足している。

バスケットボールやサッカーのコートなどと同様に、BMXにも、それをするのに十分なスペースと物が設置されていて練習したり、遊んだりできる施設がある。
広い敷地に、木やコンクリートでできたジャンプ台などが設置された、スケボーで遊べる「スケートパーク」という施設があるのを知っている人もいるだろう。BMXもそのスケートパークで練習する事が出来るのだ。
感覚的には、スケボーでやる事を自転車でやっちゃうんだと捉えてもらえればと思う。

「スケートパーク」とは言え海外では多くの場所でBMXでも利用でき、「BMX&スケートパーク」などとされていることもある。稀にBMX禁止のパークも存在するが、海外ではそもそもの絶対数が多いので、BMXをする場所に困るということは少ない。

アメリカ テキサス州オースティンの有名なパーク「ハウスパーク」はBMX&Skate Parkとの表記が。 Photo:Naoki Gaman

それに比較して日本ではその数が充分ではない上に、「スケート」パークだから、ということでBMX禁止となっているパークの比率も多いため、BMXで遊んだり、練習したりできるパークとなるとその数はかなり限られる。
近年、特に西日本を中心に、トップライダーのプライベートパークや国際大会での活躍を目指すライダーの強化施設としてのパークなど、BMX専用のパークが徐々に増えては来ているが、国内全体で考えると誰でも気軽に利用できる公共のパークの数は多くはない。

今こそ、その、BMXでも乗れるスケートパークがもっともっと、日本に設置される必要があると僕は考える。

スケーターもBMXライダーも一緒に楽しんでいるハウスパーク Photo:Naoki Gaman

海外ライダーの方がスキルが高いのは、人種や骨格の差ではない。中村輪夢を例に見る。

BMXのトップライダーと言えば、ほとんどがアメリカやヨーロッパなどのライダー達である。なぜ海外ライダーの方がスキルが高いのかと問われたら、BMXを知らない人は、人種や骨格の差と答えるかもしれない。しかしBMXライダーに聞けば、多くの人がスケートパークとライダーの数の違いと答えるだろう。

例えば、日本人ながら今や世界のトップライダーとなった中村輪夢。彼は2019年にXGAMESで銀メダルを獲得し、その後中国で行われたワールドカップ第3戦FISE成都で優勝、同時に2019年のシリーズチャンピオンにも輝いた。さらに2020年2月には、エストニアで行われた世界一勝つことが難しいとも言われる大会SimpleSessionでも優勝。つい最近はアメリカが本拠地のBMXブランドのPRO TEAMに昇格しBMX界を賑わせるなど、その勢いは留まるところを知らない。

彼が純粋な日本人である点から見ても、人種や骨格筋肉で優劣が決まる訳ではない事が窺える。京都のローカル手作りパークでのライディングから始まった彼のBMXキャリア。人一倍練習をして徐々に力を付けてきた彼の元には、協力者が次々と集まり、環境も整って行った。

地元京都の向日町競輪場で行われた国内公式戦のパークがそのまま残ったことで、練習環境が良くなった彼の進化はさらに加速し、前述のXGAMESとワールドカップでの快挙。そして2020年1月には同じく京都に、国内最大規模の中村輪夢専用パークがオープン。そこで練習を重ねた彼はSimpleSessionで世界一に輝いた。

中村輪夢専用パーク「WingPark1st」現在はさらに進化している。オープニングイベントのレポートを出せていなかったのでまた後日…! Photo:Naoki Gaman

そして、コロナ問題により大会が行われなかった約7ヶ月半、ひたすら専用パークで練習する日々を経て、先日久しぶりに行われた公式戦「全日本BMXフリースタイル選手権」では、誰が見てもわかるくらいの大きな進化を遂げたライディングで、圧倒的な強さを見せつけた。

中村輪夢の他にも、海外トップライダーや、日本国内で近年力をつけてきているキッズライダー達の中にはプライベートパークを持つライダーが少なくない。

アメリカ カリフォルニア州にあるトップライダーPat Casey (パット・ケイシー)の家にあるプライベートパーク&トレイル。まさにドリームハウス。 Photo:Naoki Gaman

このことからも、ライディングスキルの高さには環境の優劣の差が影響することはまず間違いない。もちろん、本人達の圧倒的な努力によるところが大きいのは大前提だが。

海外でBMX漬けの生活を送った経験から感じた「環境の違い」

僕も10代の頃は海外のBMXライダーに憧れて、留学を建前にアメリカやイギリスに長期滞在してBMX漬けの日々を送った経験があり、実際に現地で環境の違いを感じた。

アメリカ コロラドのパーク。住宅街にポツンとあり、無料で利用できる。 Photo:Naoki Gaman

街中に普通にスケートパークが設置されていたり、広い公園の一部がスケートパークだったりととにかく沢山ある。
しかも無料。
州や国で管理されている所がほとんどであるからだ。

こちらもコロラド。幹線道路沿いにある大きな公園の一部。奥にはボウルもあり、こちらも無料。 Photo:Naoki Gaman

屋内スケートパークもたくさんあった。
特にイギリスは天気が不安定で、雨が多かったり、真冬は日本より寒い時もあるため、屋内パークの需要は高い。
雨や雪が降っていたり、極寒の冬でも練習できる素晴らしい施設だ。
日本にも屋内パークはいくつかあるが、決して多くはないし、金額が高めで、さすがに毎日通えるものではない。それに比べ、海外の屋内パークは無料か、有料でも比較的リーズナブルだ。

凄く単純な事だが、これこそが答えだと僕は考える。

ドイツ シュトゥットガルトにある屋根付きパーク「Skatepark Pragfriedhof」 Photo:Naoki Gaman
ストリートセクションとコンクリートボウルがあり、無料…! Photo:Naoki Gaman

場所がないわけではない。ライダーも増えている。今こそパークの重要性を考えたい。

日本は国土も広くないし、都会では人口密度が高く、使える土地も限られており、地価も高いだろう。逆に人口が少ない地域は、それに比例してライダー数も少ないため、土地が沢山あってもパークの需要を行政に理解されにくい。

これらの理由から、日本で同じ様な環境を作るのは難しいと多くの人は思うだろう。しかし、本当にそうなのだろうか。

実際、五輪の影響で露出が増えたからか、都会であるなしに関わらず、ライダーの数はここ数年でかなり増えてきた。乗りたいのに環境が整っていない等の理由から街中で乗る所を見つけ、そこで練習するが、もちろん迷惑がられ通報され即退去というのがお決まりのパターンである。

フリースタイル・パークが五輪の新種目に決まったことで特集が組まれたり、ライダー達が各々CMに出演したりなど、かなり注目されている中、環境は未だ整っておらず、日本のBMXシーンが鼻詰まりを起こしているこの現状。

土地が全くない訳ではない、お金を持っている人もいる。

今こそ、未来のBMXライダー達に投資をして頂きたいと勝手に思っているが、これはただの勝手な願いではない。

ドイツのコンクリートパークでライディングするオーストラリアのJosh Dove。コンクリートパークが豊富な国で育った彼は17歳にしてこのスタイル。 Photo:Naoki Gaman

トッププロのライディングを見て楽しむこともでき、家族で楽しめるスポーツ・遊びにもなり得るBMX。その可能性は無限大だ。

事実、世界的に見ればBMXやスケートボードなどは市場がかなり大きく、XGAMESといえば地上波で放送されるほど有名な世界大会である。

僕はアメリカやイギリスのスケートパークで、多くのライダーやスケーターを見た。
その中には10代から20代でバリバリ練習しているライダーや、3〜40代、さらには60代くらいに見えるような人も、軽く流す程度に楽しんでいたり、家族連れがいたり。
家族連れというのがポイントで、公園の横にポッとスケートパークがあれば誰でも気軽に遊べ、親御さん達は公園でのんびり子供のライディングを見守ったり、逆に子供を連れて乗りに来るお父さんなど、アメリカでは全世代に親しまれ、一家に1台BMXやスケートボードがあるくらいである。

これは地域にとっても良い影響を与えるし、企業にとっても、投資するに値する大きな市場であることは間違いない。

日本ではまだ、そんなBMXの魅力があまり広く知られていない。
五感で感じられる場が少ないからである。

単純に、街の公園の一角がスケートパークであれば自然とそれは多くの人の目に入る。実際に目にすれば絶対に面白いものだし興味も出るだろう。それにより多くの人に知られる事になる。

スケートパークという環境が無いが為に、街中で周囲に十分な注意を払った上でコソコソ乗っていても怒られ、BMXのことをあまり知らない人に対してはかなり印象は悪いだろう。
街中で乗る楽しみはもちろんあるが、怒られて楽しい訳がない。
サッカーだって22人がいきなり街中で試合を始めたりしたら迷惑千万である。
もはやテロ行為である。

コソコソする必要もなく、誰にも怒られず、落ち着いて練習出来る環境がいかに素晴らしいか、乗ってる人は分かると思うが。
日本人は特に恥じらいを強く感じる国民であり、練習環境が無い中、1人で街中で乗る事が出来る人も限られる。多くの人にとって、一緒に乗る仲間は重要で、仲間が少なければ乗る回数も増えるはずがない。

もし、日本でもアメリカやイギリスのように、至る所にスケートパークがあれば、移動距離も少なくて済み、時間の節約にもなる。そしてそれが無料もしくは1日500円以下で乗れるとなれば、何かとお金のかかるライダー達には有難い事だし、皆そこに集まるに決まっている。

中村輪夢や、海外のプロライダー達のように、上手くなれる素質を持った日本人はまだまだたくさんいるはずだ。現に日本のキッズライダー達の上達具合には眼を見張るものがあるし、環境が整っている地域に住んでいたり、レベルの高いパークに足繁く通うことができているライダーのレベルは確実に上がっている。

しかしそれはどの国でも同じだろう。各国が若手の育成のため環境を整え始めている。このまま日本の環境が海外に劣ったままでは、世界大会で輝けるはずの多くの日本人の活躍を見ることなく、他の国がひたすら盛り上がっていくのをただメディアで眺める事になってしまう。

5.6万円で買えてすぐに始められるBMX。あとは環境さえあれば、世界へ羽ばたく人材が育つのだ。

もちろん、XGAMESや五輪など、大きな国際大会で金メダルを取る事が全ての目的な訳ではない。
ゆるく乗るのが楽しい、楽しければいい。
そういう人もいるだろう。
むしろそういう人がたくさん増えれば良いと思う。
結局、楽しくなければ意味ないし。楽しんでいれば人は自然と増え、その結果全体のレベルもアップし、世界で戦うライダーや、BMXに生きがいを見い出す人も出てくるだろう。

やり始めるのにサッカーほど人数もいらないし、5.6万円でBMXを買えば練習できる。

お前もやるのか、俺もやってみようかなで周りにどんどん仲間が増えれば自然に競い合ったり、切磋琢磨してスキルが磨かれるのはスポーツや音楽など、何かに打ち込んだ事がある人なら分かってもらえるだろう。
例えこの先スケートパークが増えなかった所で、五輪などの効果もありライダーが自然と増える事は間違いなく、そうなった時にスケートパークが無ければみんな行き場がなく、乗る人乗らない人でwin-winの関係が作れなくなる。

しかしその環境さえあれば乗る人は楽しく乗れ、乗らない人も楽しく見られるメジャーなスポーツ・遊び・文化などの価値あるものになっていく。環境があれば世界へ羽ばたく人材が育つのだ。

いつか街中で乗っていたあの迷惑な奴らから金メダルを獲るライダーなんかが出れば、日本人は気付かずも誇りに思うだろう。