JFBFはライダーが楽しめる環境を作るから、みんなは全力で遊んでください|JFBF出口理事長ロングインタビュー 3/3

多岐に渡る活動でBMXフリースタイルを盛り上げるJFBF(全日本フリースタイルBMX連盟)。その理事長であり、超ベテランBMXライダーでもある出口さん(ニックネームDegoo /デグーさん)に、あんなことやこんなことまでぶっちゃけた取材をさせていただいた超ロングインタビュー。
最終回は、JFBFの活動について。”強化指定選手”や”公式戦”の基準をはじめ、パーク設立やBMX禁止パークについての見解や、今後のことについてもお聞きしました。

ライトBMXパーク、JFBF事務所のドアノブはハンドルバー Photo:Naoki Gaman

強化指定選手の選考は明確な基準がきちんとしていて、全員にチャンスがある

81BMX:強化指定選手とは?また、強化指定選手になるにはどうしたら良いのでしょうか?少し複雑な印象があるので、わかりやすく教えていただけますか?

出口さん:これは明確な基準があって、今は強化指定選手と強化育成選手っていう2種類があるんだけど、強化指定選手は15歳以上のエリートカテゴリの子たちで、ワールドカップとか世界選手権を戦っていく、簡単に言えば「現在強いライダー」をサポートするための枠。

2021年の強化指定選手のひとり、高木聖雄くん Photo:Naoki Gaman

強化育成選手は、13歳から15歳、中学生の子たちをターゲットにして、東京の後のオリンピック、今だと2024パリオリンピックとか、2028ロスオリンピックとかでメダルが取れそうなライダー、目指しているライダーを応援するための枠。
こちらは国の事業で、JSC(日本スポーツ振興センター)というところが主体となって、国策として若い世代を鍛えている、というイメージです。

合宿を行ったり、海外遠征の際に費用の補助があったり、といった感じで、強くなるために色々とサポートしますよ、ということなんだけど、強化指定選手も強化育成選手も、ある一定の基準を満たしたら選考される資格があります。
(選考基準について詳しくは こちら

Japan Cup、全日本選手権(強化指定選手の場合はワールドカップ、世界選手権も)の成績を基準として、あとは面談をして、性格だったり、意気込みだったり、その子の可能性だったり、チームで戦う、ということになるから協調性も必要になるし、バランスを見ながら総合的に判断しています。

強化育成選手で最近メキメキ実力を上げてきてるジョージ Photo:Naoki Gaman

必ずしも成績順で上から、というわけではないけど、ワールドポイントってのがあって、それが50ポイントないとワールドカップのエリートクラスに出られない。ワールドカップに出られないライダーを強化指定選手にすることはないから、強化指定選手になるには少なくともそこはクリアしていないといけない。

そういった感じで明確な基準がきちんとあるので全員にチャンスがあるし、頑張った分だけ上に上がれる、讃えられるようにしっかり考えてます。

(2021年の強化指定、強化育成選手は、パーク男子強化指定:中村輪夢、高木聖雄、上田崇⼈、大和晴彦 パーク女子強化指定:大池水杜、深尾梨奈 パーク男子強化育成:溝垣 丈司、小澤 楓、石井 駿哉、寺林 昌輝 パーク女子強化育成:内藤 寧々 フラットランド男子強化指定:佐々木 元、漢那 史哉 フラットランド女子強化指定:石崎 光紗季 詳しくはこちらのJCFのWebサイトで公開されています。)

女子の強化育成は今のところ寧々ちゃんひとりだが、ガールズはその下の世代にもすごいライダーが揃っているので今後が楽しみ Photo:Naoki Gaman

ライトBMXパークはめちゃくちゃ考えた楽しいパーク

ライトBMXパーク Photo:Naoki Gaman

81BMX:ライトBMXパークについて詳しく教えてください。と言ってもSNSなどで色々情報は見てますが、メインは強化指定選手、強化育成選手のためのパーク、だけど一般利用も可、と言う認識で大体合ってますか?

出口さん:そうだね。強化選手が集まれる場所ってのが今までなかったから、それを作らなければ、と言うことで作ったのがここ。いずれはここをJOCの強化センターにしたいと思ってて。

強化選手が来て練習してるのを自由に見学できて、合宿以外の時は一緒に乗ることもできるといった感じで、トップライダーと一緒に練習ができる環境にしたいなと思ってる。これは5年10年後の話になってくると思うけど。

今も、BMXを持ってればインスタで誰でも予約して乗れるようにはなってるよ。これまでも時々、プロを目指してますってライダーが乗りに来たりもしてる。(※注)
ある程度スキルがないと難しいから、ちょっと無理ですって帰っていったライダーや、スポンジプールしか乗ってないライダーもいるけど。めちゃくちゃ考えたんで、ラインもとてつもなく多いし楽しいパークだよ。

※注 新型コロナウィルスによる緊急事態宣言などの影響で、入場規制が行われる場合があります。最新情報はライトBMXパークInstagramにてご確認ください。
ライトBMXパークInstagram https://www.instagram.com/light_bmxpark/

ライトBMXパーク Photo:Naoki Gaman
ライトBMXパーク Photo:Naoki Gaman
ライトBMXパーク Photo:Naoki Gaman
ライトBMXパーク Photo:Naoki Gaman
ライトBMXパーク Photo:Naoki Gaman

JFBF主催の大会が「公式戦」と呼ばれる理由と、他の大会との違い

81BMX:JFBF主催の大会は「公式戦」と呼ばれていますが、公式戦って何?と思っている人も多いと思います。この機会に、簡単に教えていただけますか?

国内の公式戦の中で最高峰の大会がこの全日本選手権 Photo:Naoki Gaman / Japan Cycling Federation

出口さん:前の話の中にも少し出てきたけど、UCI、JCFの話になるね。簡単に言うと、JFBF以外の団体の大会は正式な日本記録にならないんだよね。

自転車競技の場合ワールドカップ、世界選手権、オリンピックはUCIという団体が世界全てを管轄していて、そのUCIの下に日本の団体としてJCFがぶら下がってる。JCFは日本の自転車全体を見ているところで、その関連団体としてJFBFがあり、BMXフリースタイルに関してはJFBFが管轄している。

UCI傘下のJCFに認められた団体で、大会運営もジャッジに関してもUCIで定められているルールに則ってやってるから、公式な大会となってそこでの記録が公式記録、ということになる。

例えばNHKで放映された時に、大会名が「公式戦Japan Cup」になるか、ただの「Japan Cup」になるかで全く別物になる。NHKは国がしっかりした基準でやっているものにしか公式戦、公式記録とは言わないんだよね。
それに、公式戦はオリンピックを目指すために重要なUCIポイントも反映されていく。でもその他の大会ではUCIポイントはつかない、ということだね。

2019年、国内シリーズ戦の上位ライダーに送られたマットブラックのトロフィー。大人にはかなり好評だったが、子どもには若干不評だったとか?キラキラしてるのがよかったみたい。笑 2021年のトロフィーも楽しみです。 Photo:Naoki Gaman /JFBF

81BMX:公式戦だなんて数年前までは聞かなかった名前ですが、なんか日本のBMXの大会事情が一気に変わりましたね。

出口さん:そうだね。その辺は色々と成り立ってきたかなと思う。苦労した分整ってきたというか。その反面、ローカル大会が少なくなってきたという残念さもあるんだけどね。

俺らがこうやってやりすぎたせいで大会をしなくなってしまったのか、または誰もが公式戦を目指しすぎてしまっているのか、他にも理由は色々あると思うけど、ローカル大会がなくなっていくっていうのはBMXの普及にとってデメリットでしかないから。

ペルージャカップみたいな大会は無くてはいけないと思ってるし。キメラみたいな大会も、ずっとやり続けてほしいって思うし。渋谷でやってるネクストジェネレーションって大会なんかも面白いことやってると思ったし。
もしそういうのが無いなら、JFBFが公式戦じゃない大会を全国でやりたいって思うくらい重要だと思ってる。

大会に来たいけどコストの問題で来られない、とんでもないやつを発掘したい

81BMX:現在公式戦は西日本中心に行われることが多いですが、東日本、特に東北や北海道などのライダーからは「遠すぎて行けない」という声も多く聞こえてきます。今後他の地域で開催する予定はありますか?

記事を出すのが遅くなってしまったためタイムラグができてしまいましたが、その後、茨城県境町にパークがOPENし、2021年の5月には関東での大会も久しぶりに開催されました。 Photo:Naoki Gaman /JFBF

出口さん:西にこだわっている訳ではないので、行けるんだったらどこにでも行きたいと思ってるけど、極力選手が多いところにターゲットを置いてるから、北陸、東北、北海道とかはどうしても行きづらくなっちゃうよな。民族大移動をしなきゃいけなくなる。エントリーしてるのがほとんど遠方のライダーで、地元民はちょっとしかいないみたいな。

実は全日本なんかはエントリー数がかなり多くなってきて運営がギリギリで。どこかで予選会をやらなきゃいけないくらいになってて。だから日本を5ブロックくらいに分けて地区大会をやって、決勝8人だけが全日本に出られるようにするとか、そういうことも考えてる。

さらにその中で例えばTOP3だけは招待するとか。来たいけどコストの問題で来られない、とんでもないやつがいるかもしれないじゃん。そんなライダーをJFBFで費用負担して発掘するのもありかな、とか。あとはWeb大会をやって優勝したライダーを招待するとか、色々構想はある。

81BMX:では、遠くてなかなか行けないよ、ってライダーも、もうちょっと待っててね、って感じですかね?

出口さん:もちろん。何らかの方法で出られるチャンスを作ります!

先陣きってやろうと決めたコロナ禍の中での大会開催

81BMX:コロナ禍により2020年春の大会は中止となりましたが、2020年9月には全日本選手権も開催し、その後は延期や中止をすることなく開催されていますよね。コロナ禍で大会開催もかなり大変だと思いますし、そもそも開催する勇気もかなり必要だったかと思いますが、開催されてみていかがでしたか?

出口さん:スポーツ庁のガイドラインっていうのがあるんだけど、すごく厳しくて、ほとんど「やるな」くらいの内容だったんだよね。2020年9月の全日本選手権に関してはどこの競技団体もまだやってなかったから本当に迷って。

色んな競技団体が、中止、返金、とやっている中で、やりますって発表した形になるんだけど、その方法は完璧ではないけど、保健所にも来てもらってアドバイスをもらいながら色々考えて。
リムやトシオ、ミナトとか、ライダーにも聞いたけど絶対やって欲しいって言われたし、だったらやろうって。

2020年の全日本選手権以降の大会は、入り口で検温、消毒、観客も少人数で、と、コロナ対策をしっかりしたものに。Photo:Naoki Gaman / Japan Cycling Federation 

無観客開催も考えたんだけどみんなは去年と同じクオリティがいい、イコール観客を入れてほしいって。そうやってみんなで盛り上がるのがBMXでしょって。
だからもう、何かあったら俺が責任取ればいいからやろうって。JFBFはまだ歴史も浅いし、初心者ですいませんでしたって言えばいい、先陣きってやろうってことで、開催したんだよね。もちろんスポンサーからも色々絞られたりしながらの開催ではあったけど、前回と同じクオリティの大会を開催しようと。

2020年の全日本選手権の会場 Photo:Naoki Gaman / Japan Cycling Federation
こちらは2021年の全日本選手権の会場。2021年はさらにシビアな状況で、無観客、かつ、会場に入る全ての人にPCR検査を義務付けての開催でした。 Photo:Naoki Gaman / Japan Cycling Federation

パークがあって、フラット会場があって、ダートもあって、ストリートもあって。みたいなのが夢

81BMX:現在、JFBFで運営している大会はパークとフラットランドですが、2020年の終わり頃にフラットランドがオリンピック種目候補から外れたという噂が流れましたよね。もし本当にそうなってしまった場合、今後JFBFのフラットの大会はどうなるんだろうという声も聞こえてきていますが、その点についてはいかがですか?

2021年フラットランドの全日本選手権で優勝した佐々モトくんと中川キララちゃん Photo:Naoki Gaman / Japan Cycling Federation

出口さん:オリンピック種目になる可能性が全くなくなった訳ではないと思うし、それを何とかするのが連盟だと思ってる。
それにもし万が一、オリンピック種目に採用されなかったとしても、今までやってきたフラットのJapan Cupや全日本選手権を辞めるなんてことは考えてもいないので、その点については安心してほしいかな。

フラットランドの会場。観客席はソーシャルディスタンス Photo:Naoki Gaman / JFBF

81BMX:オリンピックは関係なしに、BMXフリースタイルというくくりで考えるとストリート、ダートジャンプも入るかと思いますが、それらの大会やイベントを開催する予定などはありますか?

出口さん:やる構想はあるし、やりたいけど、正直追いつかない。メンバーも足りないし。トレイルに関しては、色んなところにあるから各地のトレイルに協力してもらってシリーズ化するのは夢ではないと思ってる。
ストリートは、街でやるには許可が大変すぎるし現実的では無いけど、ストリートセクションが充実したパークで開催するシリーズ戦は可能だと思ってる。

81BMX:すぐには難しくても、やりたいな、という気持ちはあるよ、ということですね。

出口さん:やりたい、というより、やる。だって夢じゃん。パークがあって、フラット会場があって、ダートもあって、ストリートもあって。みたいな。
それに、パークライダーしか出なくなってきたから今はこうなってるけど、前はストリートクラスもあったから、それを復活させるのもアリだなって思ってる。
そもそもBMX好きな奴らがやっている連盟なんで、やらないことはないなって。

パーク設立に関しては、BMXは今、タネを撒いてる時期

81BMX:Webサイト記載の活動内容の中に「パークなど施設の増加・BMX愛好家の増加を行う」とありますが、これまでJFBFの活動により作られたパークや施設について教えて下さい。

出口さん:ライトBMXパークに、京都の競輪場もだね。(そして前出の茨城大会が行われた、茨城県境町のアーバンスポーツパークも追加されましたね。)

茨城県境町にできた境町アーバンスポーツパーク Photo:Naoki Gaman /JFBF

パーク構想は色々あるんだけど、例えば行政がパークをつくりますってなって、実際にできるのって大体5年後10年後なんだよね。来年できますよ、ってことはないから。今、スケートボードが乗れるパークがバンバンできてるけど、あれって5年以上前からその計画があったんだよね。

JFBF事務所にて。とあるパークの設計会議とのこと…! Photo:Naoki Gaman

それに対してBMXは今、タネを撒いてる時期で、今後どんどん増えていくと思う。話があれば俺も実際に行くし、協力しない理由が無いから。
自分でいうのは何だけど、ずっと色々やってきて、色々な繋がりや説得力はあると思うから、みんな上手いこと活用してほしい。来年作ってくださいってなると民間企業のスポンサーを集めてきてお金の力で作るしか無いけど。行政と一緒にやっていくとしたら5年10年コースかな。

BMX禁止スケートパークには、大体の場合それなりの理由がある

81BMX:各地でパークの建設や存続、BMX禁止スケートパークの解禁などに向けて活動し、色々苦労しているライダーも多いと思いますが、連盟として何かサポートしていただけることはあるのでしょうか?

出口さん:BMX禁止のパークについては、これは俺も色々掛け合ったけど、正直ほとんどの場合無理だと思う。AJSA(一般社団法人 日本スケートボード協会)のトップである横山さんも、BMX乗れないってのは確かに申し訳ないと言ってくれてはいるんだけど、その5年前、10年前に一生懸命動いたのはスケーターであって、完成してからBMXライダーが乗らせてくれって言ってきても、それは無理だよなと。
確かに、逆の立場だったらBMXライダーもそう言うだろうし、言わなくとも良い気はしないだろうなってことは想像できるよね。心が狭いと思われるかもしれないけど。

簡単なことではないし、時間も労力も、お金も割いてるし。スケート向けのパークに設計されてるってことよりも、ずっと頑張ってきたスケーターからしたら、BMXがいること自体が嫌だと思われても仕方がないよね。
そこで乗らせてくださいって、まぁ、段階的にやるのは可能だとは思うけど、簡単にできる話ではないと思う。人の心を動かさないといけないことだから。それなら自分たちで一から動いたほうが良いんじゃないかなって思う。

81BMX:状況によりけりではあると思いますけど、確かにそうですね。

例外的な話もあって、例えば宮城県の閖上のパークなんかだと、矢浪さんだったりOPJさんたちがずっと震災復興支援のショーをやってきた場所のすぐ横の、しかも「サイクルスポーツセンター」という場所の中にできたパークなのにも関わらずBMX禁止で、スケートボードとインラインスケートだけとなっていて。

何故だろうってことで地元のライダーが理由を聞いてみたら、「スケート」パークという施設だから、というだけの理由だったんですよね。担当の方が、スケートパークだけど、BMXでも一緒に乗れるってことを知らなかったといった感じで。
地元ライダーがSNSで呼びかけてみんなでメールで問い合わせ、お願いをしたら、すぐにBMXもOKになったってこともありました。

そういう例もあるから、なぜなのか調べたり、動いてみるのは無駄ではないと思いますが、スケーター任せになってしまっていたから、という場所は厳しいかもしれませんね。できることなら、今後は計画段階からBMXライダーもしっかり関わって行くようにするべきなんでしょうね。

地元コミュニティを大切に、計画段階から参加できるようにしたいですね Photo:Naoki Gaman

出口さん:そうだね。スケート、それにAJSAはやっぱり歴史が長い。そこが俺たちとの違いだよね。いち早く動いて、今それが形になってる。俺らはまだタネ撒き状態だよね。

それと、気になってるのはSNSの使い方かな。BMX禁止のパークに対してネガティブなことや批判を書いたりしているのを時々見るけど、それはどうなのかなって。それなら直接言うなり、無理なら自分でブログを立ち上げるなりすればいいのに、SNSでわざわざ発信して共感を求めるのはどうかなって思ってる。じゃないと、こんなこと書かれてるわ、絶対こんな奴ら乗せねえって思われてしまうよなって。そういう、悪い連鎖が続いている場所もある気がしてる。

それなら、全然関係ないけど掃除するとか、普段は乗れないけど、貸切でなんかやらせてくださいって交渉してみるとか、まずはスケートボード乗ってみるとか。そうやって徐々に関係性を築いていけばいいんじゃないかなって。
ライトパークだってスケートボードで乗っても絶対楽しいと思うけど、知らないやつがいきなり来て乗らせてくださいって言われても、何で?ってなっちゃうしね(笑)それならBMXで来てくれて、一緒にうだうだやって、スケートも乗ってみる?ってこっちから言うくらいに仲良くなろうよって感じかな。全ては人間関係だと思うけどね。

ライダーがいてこその連盟だから、ライダーは一生大切にする。

2019年 中国で行われたFISEにて Photo:Naoki Gaman

81BMX:JFBFを運営していく中での信念のようなもの、こだわっていることはありますか?

出口さん:ライダーのために。それだけ。財界だったり企業だったり色んな団体だったりに文句を言われても、ライダーだけには信じてもらいたい。ライダーのためだったら何でもやる。ライダーがいてこその連盟だから、ライダーは一生大切にする。それだけは崩れない信念かな。

81BMX:JFBFの活動をしてきた中で、今までで一番嬉しかった出来事は何ですか?

出口さん:ライダーの笑顔かな。
BMXフリースタイルってお互いを称え合う文化に成り立ってるよね。大会が終わって、もちろん悔しい思いをすることだってあるだろうけどそれを相手にぶつけたりはしないし、勝っても負けても喧嘩することもなく、称え合ったり、慰めたり、お互いにお前すげーなってハグして、ハイタッチとかグータッチとかして、笑顔で。そんな姿を今も見続けていられるのは嬉しいなって。もしそれがなくなってしまったらJFBFは無くなってもいいかなって思う。

”公式戦”とよばれるようになっても、そういう部分は忘れたくないですね Photo:Naoki Gaman

大会に出てる特に下のクラスの子はわかると思うんだけど、俺は実は4歳アンダーが入場してくるときに入り口に絶対立つようにしてるんだよね。膝をついて目線を合わせて。そうすると、入ってくるライダーたちが、おはよー!!って入ってきてくれるんだよね。それがすごく嬉しくて。それを時間が許す限りやってるんだよね。お父さんお母さんと接するのも楽しいし。
今日もがんばりまーす!!みたいに入ってきてくれたり。初心に帰れるというか、あの空間がすごく楽しい。

朝の受付時もできるだけライダーとコミュニケーションを取るデグーさん。 Photo:Naoki Gaman / Japan Cycling Federation

81BMX:色々な活動をされながらライディングも続けられていますが、ライダーとしての目標などはありますか?

出口さん:やっぱ、ロスオリンピックかな(笑)
うそうそ。ぶっちゃけると、最近やっとちゃんと乗り始めたんだよね。法人になってからどうしても忙しくて年に2〜3回しか乗れてなくて。ここができて、みんなが乗ってるのがめちゃ楽しそうで。乗れない自分っていうか、太ったし、なんか飛べないし、バランス崩れるし。(笑)チャリを変えれば飛べるんじゃないかって思ったけど全然飛べんし。これは絶対自分だって。(笑)
2020年の全日本選手権が終わってからかな、ちゃんと乗り始めたのは。全然技もできなくなってるけどやっぱ乗るだけで楽しいし。体重も減り始めたし、もうちょっとしたら技しようかなって。(笑)

81BMX:あれ?こないだフットジャムの写真載せてませんでしたっけ?

出口さん:フットジャムとかそのへんはできるけど、スリーとかテールウィップとかバックフリップとか全然できなくなってるし(笑)ストレートジャンプで何故かコケるくらい下手くそになってて。

最近また乗り始めてるから、BMX面白いなって。今までできた技はできるようにしたいなとは思ってる。360ダウンサイドテールウィップが大好きだから、練習しようかなって。ダブルになったらさらにかっこいいし。
まぁ、とりあえず、楽しく乗り続けたいなって思ってる。

トシオが言ってくれた「バックフリップができる理事長」てのがすごく印象に残ってて。理事長になったばかりの時はできてたけど、今もやれって言われたらできるかもしれないけど根性がまだ決まってない。(笑)

トシオくん:環境(スポンジプール)は整ってます。(笑)

81BMX:近い将来、「バックフリップができる理事長」が復活するんですね。

ライトパークでウォールをきめるデグーさん Photo:Naoki Gaman

出口さん:今の若い子たちは、俺のこと「理事長」って思ってるだけで、乗れる人だとは思ってないらしくて。俺が元々乗ってたって知らんのよ。
ここができてから毎朝、壊れてるところがないかとか、チェックするために少し乗ってるんだけど、たまたまそこに来た若いライダーが、え!?乗れるんですか!?って。(笑)
カエデ(岐阜県のキッズライダー 小澤 楓)がめっちゃ言ってたな。「乗れるんや…しかも、うま!」みたいな。そしたらお母さんに、当たり前でしょ!って怒られてた。(笑)
俺はカエデがそんな風に言ってくれてなんか嬉しかったけどな。

トシオくん:カエデ、こないだ会った時に言ってましたね。
「あのな〜、出口さんわかる〜?理事長の。乗ってたんやけど、結構上手やってん〜。」
って(笑)

一同:爆笑

81BMX:では理事長バックフリップエディットの公開を楽しみにしています。
では、今後日本のBMXシーンはどうなって行くと思いますか?また、どうなってほしいと思いますか?

出口さん:どうなって行くだろうな。想像つかないけど、元に戻るんじゃないかな。みんなが一緒の場所に集まって、一緒に楽しめるBMXになるようにしたいと思うし、讃え合える文化は無くさないように、そこはブレないように。

メジャーになって欲しいとかはあまり思わないし、今のままでもいいとは思うけど、でも、夢があってもいいよな。リムやミナトがポルシェ乗ってるとか?(笑)
ポルシェに限らず、そういうのを買えるくらいの余裕ができるとか、もらえるとかね。それぐらいのライダーも出てきてもいいかなとは思う。だけどみんなが楽しむって精神を忘れない、みたいなそういう世界でいて欲しいかな。

実際、昔はみんなボロボロの服とか着てたけど、最近は小綺麗になってきてるしね。それだけこの業界が認められてきたんだなっては思う。
トシオのズボンが破けてない、軍手がグローブになったってのが、一つの成功例かな。

中国で2週連続大会があった時のバス移動。お隣中国とはいえ、これだけの人数で海外遠征できるようになった、というのも良い変化ですよね。 Photo:Naoki Gaman

81BMX:では最後の質問です。日本のBMXライダーみんなにメッセージをお願いします。

出口さん:楽しんでください。ほんとそれだけ。しっかり遊んでくださいって感じかな。

今まで俺、BMXのことをスポーツって言ってないんだよね。遊びだと思ってるから。ライダーのことも、便宜上選手と表現しなければならない時もあるけど、基本的には選手とは呼ばず「ライダー」って言ってる。

JOCの会議で、スポーツの概念とは、みたいなのを一人一人言うってのがあって。みんな、国民を背負って〜とか言ってる中で、自分の番が来た時に、そんなの遊びでしょ、って言ったら静まっちゃったことがあって。(笑)

大会中でもいつもひたすら楽しそうなこの面々 Photo:Naoki Gaman / Japan Cycling Federation

ちゃんと説明させてもらったんだけど、スポーツの由来ってそもそも遊びだったわけでしょ。オリンピックだって、戦争があった時に、この時だけは仲良く体を動かしてみんなで遊びましょうよ、ってのが起源だし。
それがスポーツになって、競技になって、色々すごくなってから日本に輸入されたからスポーツってイメージになってしまってるけど、そもそもは遊びから始まったってことを今の日本のスポーツシーンは忘れてませんかって。
みんなが笑顔で讃えあえる文化だったり、元々はそういうものがあったのに、そこを忘れてるようなスポーツはどうなんでしょうって。

BMXフリースタイルはクソガキどもかもしれないけど、人間力は強い奴らだし、人生かけて、命もかけて。血と汗と涙の結晶ってのはBMXのためにあるとさえ思ってる。その中の全てが遊びなんですよって。

だから遊びをしっかり楽しむってのがBMXでは大切だと思ってるし、JFBFも絶対そこはブレない。JFBFはライダーが楽しめる環境を作るから、みんなは全力で遊んでください!

 

以上、出口理事長インタビューでした。波瀾万丈すぎて超ロングになってしまいましたが、色々と勉強になりました。
良くも悪くも激動のBMXシーン。大変なことはあっても、そんな時代にBMXに関われているってすごく貴重で幸せなことですよね。
大きな節目のオリンピックは終わりましたが、この先にも楽しいことがたくさん待ってると思います。
一生かけても多分満足できないBMXですが、可能な限り遊び尽くしたいですね!

今週末から3週連続で、パーク、フラットランド、レース(!)のJapan Cupが開催されます!今年の最終戦。レースでは初のJapan Cupです。
パークでは理事長が30オーバークラスに出場するという噂も…!!!?
それぞれの詳細はJFBFの公式サイトや各SNSで公開されていますので、ぜひチェックしてみてください!

JFBF公式サイト https://japanbmx.com/