「3年間の経験が自信に繋がった。やることやってきます!」ー 中村輪夢 パリオリンピック直前インタビュー

Team Japanがパリに旅立つ10日ほど前のある日。京都の「Wing Park 1st」 にて中村輪夢の公開練習が行われ、たくさんのメディアが詰めかけました。

2020年のオープンから4年半が経った中村輪夢専用パーク「Wing Park 1st」は、近年の大会パークの傾向に合わせ、セクションの高さや角度がバージョンアップされており、中村輪夢の成長を強力にバックアップ。

練習後のコンディショニングのためサウナまで設置され、身体の調子もすごく良いそうです。

公開練習と公開サウナ(笑)の後の取材タイムで、ひとつひとつ丁寧に、たくさんの質問に答えていた中村輪夢。1日の終わりに、81BMXでもインタビューをさせてもらうことができました。

81BMX:まずは、改めまして、パリオリンピック出場、おめでとうございます!!

輪夢:ありがとうございます!!

81BMX:今回のオリンピックは、予選期間が2022年の11月から2024年の6月までとなっていて、OQS(Olympic Qualify Series / オリンピック予選シリーズ)もあったり、前回の東京の時よりも複雑なシステムになってたよね。
その複雑で長い予選期間をどのように乗り切った、というか、どんな気持ちで過ごして、ライディングしていましたか?

輪夢:まぁ終わってみたら長かったな〜、とは思うけど、プラス要素としては、(2022年、予選期間始まってすぐの)世界選手権で世界一になったことで、アジア枠がゲットできてたから。
OQSでは結果でえへんかったけど、自分的にはマイナスな気持ちはなくて。みんなはやっぱ、OQSにはオリンピックに出れる出れへんがかかってるから必死になって行ってたけど、その間自分は自分の練習しつつ、新技の練習時間にもあてることができたから。世界選手権の優勝は、世界一だけじゃなく、デカかったな、っていう感じですね。終わってみたら。

2022年世界選手権にて(本人提供)

81BMX:世界選手権優勝によって生まれた気持ちの余裕が色々プラスに働いたんだね。

輪夢:アジア枠ってことだっだから他のアジアライダーとの兼ね合いもあってまだ確定とは言えないとか、そんなんやったけど。 
(※編集注※ OQSの結果が優先されるので、もしも他のアジアライダーがOQSで枠を取った場合、輪夢のアジア枠が消えてしまう可能性もあった。)
でも最終的にはそこが響いて、世界一になれてよかったっていう喜びと、このオリンピック出場に繋がった、という両方の喜びで。ほんまにあれは勝てて良かったな〜って。
もちろんOQSで結果出して出場!って方法もあったけど、OQSは結果でえへんかったけどハンガリーも感触はよかったし!

81BMX:OQSって、上海とブダペストでパークの感じが全然違ったじゃん?上海は、ザ・ジャンラン!!だったけど、ブダペストは初めての完全左右対称、さらにジャンラン無しだったし。どっちが好きだった?

輪夢:ハンガリー(ブダペスト)のほうが、お〜!面白いな〜とは思ったけど、その分難しかったな〜。上海は、なんか別にめっちゃ緊張してたとかではないけど調子があまり良くなかったので…。でもハンガリーは気持ちよく走れたっていう意味では、オリンピック前ラストは別に嫌な思い出ではなく。

ハンガリー・ブダペストでのライディング。ジャンランがないコースは初めて。

81BMX:良い感触で終われた感じだ?

輪夢:うんうん!

81BMX:上海は、謎の転け、とかあったしね笑

輪夢:謎でしたね〜。事故!笑

81BMX:空中で何かがぶつかってきたってことで。

輪夢:当たり屋がぶつかってきた!

オリンピックはセキュリティが厳しいので、当たり屋の心配はせずにのびのび乗ってほしいです!笑

81BMX:まぁ、そんなこともあったけど笑
世界選手権の優勝もあってか東京の前よりリラックスしてるように見えるんだけど、東京の時と違う感じ?

輪夢:今は全然!練習が調子良いっていうのもあって。挑むこの気持ちは全然良い状態で。
やっぱ東京の時は、初めてやったし、怪我もあったしとか。不安なことが自信より上回ってたけど、今は、やり切れればいけるっていう自信のほうがあるからやっぱり、1回目と2回目は違うな〜って。

81BMX:それってやっぱり自分自身が大人になったっていうのもあるだろうし、調子良くライディングできてるってのもあるだろうし、もちろん単純に2回目だからってのもあるだろうし。色々な要因があると思うけど、何が大きいと思う?

輪夢:金メダルを取りたい気持ちだけで言ったらやっぱ前回より大きいけど、この3年間での経験が全部自信に繋がってるのかな〜。って言いながら、緊張は、どうせするやろな〜と思いながら。

81BMX:その場に行ったら?

輪夢:大会始まっちゃったら。でもそれでも、まぁ前回とはやっぱり違うかな、っていう感じではありますね。

独特の緊張感があったTOKYO2020、BMXフリースタイルにとって初めてのオリンピック

81BMX:東京の時は笑顔の裏に緊張が滲み出てた。

輪夢:まぁ自信もそんなになかったというか、まだやっぱあの時は…。2019年も良かったけど。

2019年はFISE(ワールドカップ)最終戦で優勝、同時にシリーズチャンピオンに輝いた

81BMX:2020年の2月はシンプルセッションも優勝したけど?

2020年2月9日、自身の18歳の誕生日に世界大会Simple Session優勝!

輪夢:勝てたけど。でもまだラッキー、ぐらいの気持ちやったのが、今はもう世界で戦えるぞっていう気持ちになって。だから、(やりたい技が全部)決まれば、行けるかなっていう自信が持てたっていうのはデカいと思いますね。

81BMX:東京の時はそこまでは自信なかったんだ?

輪夢:まだそうですね〜、いやいやローガンなんか全然上!みたいな気持ちの方が大きかったですね、東京の時は。

81BMX:さっきTVの取材で、出場ライダー12名中、東京に続いて2回目出れるライダーってたった4人しかいなくて、それだけですごいことですよね!って話をしてたよね。ローガン、ジャンジャン、ジャスティン、そして輪夢。その中で、それ以外でももちろん良いけど、コイツは強敵だ!みたいなライダーはいる?

輪夢:う〜ん。まぁ強敵やし、フランスの、自国って言う意味ではジャンジャン。

81BMX:ホームだし?

輪夢:ホームのやつに勝てれば気持ちいいやろなっていうだけで。最近勝ってるってのもあれやけど。まぁ、ノリにノッてますからね〜

81BMX:勝ちまくってるからね。確かに、ジャンジャンに勝ったら最高の気持ちよさだね。

輪夢:そういう意味で、ライバルっていうか笑、倒せたら気持ちいいやろな〜!って。

81BMX:ホームだから、歓声もすごいと思うけど。同じくフランス・モンペリエのワールドカップとかも会場がもう、ジャンジャンフィーバー!!になっちゃうしね。でも日本からもスポンサー、家族、友だち応援団が現地に行くと聞いてるし、日本で見てるみんなからもパワーがたくさん届くからね!

輪夢:まぁ海外だし、全然そこに気負いはせえへんし。実際その時になってみなわからないし、パークも乗ってみなわからないし、あれやけど。
とりあえず出発前にできること全部やって、向こう行ってもやれること全部やれば。良い結果になってもならなくても、気持ち良〜く終わって、気持ち良〜くやり切れれば。まぁやり切れれば結果もついてくるだろうっていう気持ちですかね!

81BMX:パリのパークについては、感想はどう?面白そう?

輪夢:面白そうですね!ある程度頭で考えて、やりたいことも出せそうやなって。良いラインが組めればチャンスはあるなって。うわ〜!ナシやな〜!とかでは全然無くて、ライン次第やなって。

81BMX:楽しみだね!

輪夢:みんなそれぞれ変わりそうだなって思うから、それも面白そう!

81BMX:どうしてもジャンランメイン!みたいなレイアウトだとみんな同じラインになりがちだもんね。

輪夢:飛ぶは飛ぶであるけど、ラインはみんな変わりそうやし、楽しそうやと思います。

81BMX:ちょっとライティングの話から一瞬離れるんだけど、大会の時って好きな音楽をかけてもらえることが多いじゃん?東京オリンピックでかけた2曲を選んだ理由を聞きたいです!

輪夢:それもやっぱ、地元背負うっていう気持ちと、自分のために作ってくれた!っていうのと。

「HIGH AIR / ANARCHY」中村輪夢のために作られた曲。

もう1曲も京都の人やし。やっぱ地元好きやし。

「GO AHEAD / 13ell feat. SNEEEZE (prod.BERABOW) 」

81BMX:音楽って大事だよね〜

輪夢:でも最近はイヤホンで音楽聴きながらは乗ってなくて。最近気づいたことやけど、ポケットに携帯あんの邪魔やなって笑

81BMX:それ最近気づいたの?笑

輪夢:とうとう気づいて、やめたんですけど笑
パリは、好きな曲がかけれるってのがあるかどうかまだわかんないけど。でも、良い音楽かかる、かからへん、でやっぱちゃうな〜っては思いますね。こっちの気分的に。

81BMX:特にあの時はアナーキーさんが作ってくれた、13ellくんは京都で仲良し、ってのがあるもんね。

輪夢:音楽は普段の練習でも怖さを紛らわしてくれたり、大会だったら緊張紛らわしてくれたりとかあるし。ちょっとでもチャリに集中できるようにって思って曲をリクエストしたけど、まぁ……、あんだけ緊張したんで笑
次も、緊張するやろなー!って感じやけど笑
まぁでも1回目と2回目は違うかな〜って思います。

81BMX:うん。リラックスして臨めたらいいね。

輪夢:楽しめれば!楽しんでる時が、良い結果出てるのかなっても思うし。

81BMX:ちなみに音楽繋がりで、国内大会でもいつも音楽のチョイスが気になってるんだけど…
去年の9月、岡山での全日本でかけてた「六甲おろし」はなんで選んだの?笑

六甲おろし にのせて空を舞う中村輪夢と、盛り上がるオーディエンス

輪夢:「六甲おろし」は、ただ阪神が好きなだけで笑

81BMX:阪神が優勝したから?

輪夢:まぁ、ネタっすね!笑

優勝したタイミングってのもあるけど、ウケればいいなって。エンターテイメント要素って感じで。

81BMX:ちゃんとウケてた笑

輪夢:ウケてたからよかったですけどね笑

81BMX:あれでも隣の広島だったらヤバかったね。

輪夢:広島だったら終わってましたね!笑

81BMX:笑
もう1曲、すごく印象に残った曲があって。横須賀のJapan Cupの時のなんだけど。

輪夢:VIGORMAN!

「VIGORMAN / 音返し」

81BMX:歌詞がね、すごく良いなって思ったんだけど、あれはなんで選んだの?

輪夢:VIGORMANも知り合いっていうのもあるし、あの曲は、彼もちょっと色々大変なことがあっての、戻ってきて1発目の曲で。僕やっぱ曲調よりリリック重視なんで。アナーキーさんとかもやっぱ、這い上がる精神というか、何も無かったところから…、というような歌詞がやっぱ好きやからこそ。彼もそういう、一回失敗してしまったところからの、リスタートという意味で。

VIGORMAN / 音返し にのせて空を舞う中村輪夢

81BMX:良いな〜って思った歌詞がいくつかあって、例えば、「失敗すらいつか…」

輪夢:「失敗すらいつかDigest」だよなってやつっすね!
いや〜あの歌詞、あの曲、めっちゃ好きですね〜

81BMX:この曲は、なんだかBMXライダー中村輪夢にも重なるようなところがあるかなって、勝手に思ってて。東京で悔しかったことも、パリでリベンジできたらダイジェストになるよな、とか。曲の中の色々な部分で勝手に重ねて感動してた。

輪夢:人生なんでね。ずっと良い時ばかりなわけでもないし。良いことがあれば帳消しにできるし。帳消しにすることは自分にしかできないし。ということがわかってて、経験してるからこそ。
やっぱ世界一になったところで東京オリンピックでの悔しさは1ミリも変わらないので。そこはやっぱ結局オリンピックでしか晴らすことできないなって。
まだ22歳やけど。とりあえずそのモヤモヤは解消しときたいなって。

81BMX:そうだねーーー。オリンピックの借りはオリンピックでしか返せないね。

輪夢:返せたら。もう、オールオッケーやな!って感じですね!

81BMX:話を聞かせてくれてありがとう!日本のみんなで、それができるように祈ってます!!

輪夢:はい!やることやってきます!!

81BMX:では最後に、日本のライダーのみんなに一言お願いします!

輪夢:将来の子どもたちは、オリンピック目指す子も多いと思うんで。ちょっとでも、日本人いけるぞ!って勇気を与えられるように、頑張ってきます!

81BMX:パリでパリッと!

輪夢:パリッと勝って!!

81BMX:パリッと勝って、気持ちよ〜く帰ってきてね!!

そう言ってパリッと旅立って行った中村輪夢。開会式の日から続いた雨により、4日間あるはずの練習が2日間になってしまったとのことですが、限られた時間の中で、調子良く乗れたでしょうか。
本日、いよいよ予選が行われます!3年前よりひとまわりもふたまわりも成長した中村輪夢のリベンジを、みんなで見届けましょう!レッツゴー輪夢!!

Paris 2024 BMX Freestyle
TVerで配信予定

7月30日 予選 
女子 🇯🇵20:25 〜 (🇫🇷13:25 〜)
男子 🇯🇵22:11 〜(🇫🇷15:11 〜)

7月31日 決勝
女子 🇯🇵20:10 〜 (🇫🇷13:10 〜)
男子 🇯🇵21:44 ~(🇫🇷14:44 ~)