イギリス・スコットランド南西部の都市であるグラスゴーで開催された「2023 UCI CYCLING WORLD CHAMPIONSHIPS(UCI自転車競技世界選手権)」。13種目もの自転車競技の世界選手権が同時開催される中、BMXフリースタイル・パークは8月5日~7日の3日間の日程で行われ、男子はイギリスのKieran Reilly(キーラン・レイリー)が初優勝、女子はアメリカのHannah Roberts(ハンナ・ロバーツ)が5度目の優勝を果たしました。
自国開催でオーディエンスも味方につけたキーラン・レイリーによる高難易度トリックのオンパレード、そして中国女子の台頭でプレッシャーもあっただろうハンナ・ロバーツの渾身のライディングと涙は必見。今回LIVE配信はジオブロックにより日本から見ることができませんでしたが、上位3名+αのライディングはUCIのYoutubeでハイライト映像を見ることができます。
予選通過できずだったJAPANライダーも可能性は無限大
今シーズンは何かと雨に悩まされることが多いBMXパーク。今大会でも、初日の5日から男子予選の進行中に雨が降ったため日を跨いでの予選開催となったり、セミファイナルが中止されたり…。翌6日もまた雨による中断があるなど、またしても気持ちと身体のコンディションを整えることが難しいハードな大会となってしまいました。
世界選手権は派遣選手のみが参加できる大会で、日本からは中村輪夢、溝垣丈司、⼩澤楓、寺林昌輝、⼤和晴彦、内藤寧々がエントリー。決勝には中村輪夢と⼩澤楓が進出しました。
予選のLIVE配信がなかったため全員のライディングを見ることはできませんでしたが、6日の予選がちょうど内藤寧々のランの途中から配信されていたので予選の様子を少しご紹介します。
内藤寧々は1本目、エアターンテールウィップの着地で足が外れて失速してしまったようですが、ワンフットエックスアップ to キャンキャンやルックバックなど、いつものかっこよさを随所に散りばめ60.80ポイントを獲得。2本目はバックフリップをメイクしエアターンテールウィップの着地も完璧で良さそうに見えましたが、ゲシりが響いてしまったのかポイントは伸びず59.68ポイント。2ランの平均で60.24ポイントとなり、最終順位は16位でした。女子のレベルがどんどん上がっており、大変な状況だと思いますがこれからも頑張ってほしいです!
溝垣丈司は大好きなKevin Peraza(ケビン・ペラザ)の次にスタート。ケビンもまた、ジョージのライディングがお気に入りとのことで、今回もスタート前に隣で盛り上げてくれていました。
クォーターの上に配置されたミニランのようなセクションで、クラックフリップイン→バースピンアウト、からのメインのコースにバースピンインと、オリジナリティ溢れるスタートで場を盛り上げるも、ファーストランは残り10秒で惜しくも転倒。セカンドランも最後の最後、お馴染みの逆飛び180で転倒してしまい残念ながら予選通過することはできませんでしたが、世界中が注目し始めているスタイリッシュなライディングはまだまだ進化中。次回も楽しみですね!
予選と女子決勝のLIVEアーカイブはUCIのYouTubeに残っています。日本からはブロックされていますが、VPN使用で見ることができるので気になる方はぜひチェックしてみてください。(男子決勝は見ることができません)
決勝では中村輪夢と小澤楓がニュートリックをメイクし大健闘
初日の雨によりセミファイナルが中止となったため24名で行われることになった男子決勝。日本人ライダーで決勝に進んだのは、予選2位通過の中村輪夢と21位通過の⼩澤楓の2名。小澤楓は大会最年少の15歳で、世界大会では、同様の24名決勝だった5月のモンペリエに続いて2度目、世界選手権としては初の決勝進出となりました。こうして経験を積んでいくことで、12名での決勝にも残れる力が確実について行くはず。雨はもう嫌ですが、楓が決勝を経験できたのは嬉しいポイントと言えるでしょう。
そんな小澤楓はヒート1に登場。高さのある安定したジャンプで、バックフリップテールウィップ to バースピンなど次々とメイクされる大技に盛り上がる日本チームの姿も画面に映し出されていました。ジャンランでのトリックだけでなく、ウォールを使ったバースピン to ウォールタップ to バースピンなどもメイクしオリジナリティとバリエーションを見せつけます。
2ラン目でメイクしたダブルトラックドライバー to バーバックは大会で出したのは初めて。そして、バックフリップトリプルバースピンは、世界選手権の直前に岡山で行われた合宿で習得した、出来立てほやほやのニュートリックとのこと。それをこの大舞台で決めてしまうなんて本当にすごいです。まだ15歳だということにMCも驚きを隠せない様子でした。
ヒート3では予選7位通過のキーラン・レイリーが高難易度トリックを連発し、最後にダブルフレアまでメイクして95.80ポイントを叩き出し本人もMCも会場も大興奮。その後にライディングすることになった中村輪夢含むヒート4の6名はなかなかプレッシャーだったと思いますが、そんな中でもさすがのパフォーマンスが続出していました。
中村輪夢はファーストランでバックフリップバースピンをした後、流すようにライディングをして38.00ポイントでフィニッシュ。バックフリップトリプルバーかバーto何かをしようとしたけどミスしちゃった?という雰囲気だったのもあり、ワクワクドキドキで見守っていたところ、輪夢と予選1位通過のローガンのセカンドランを残すのみということろでまた雨が。今年の天気はどこまで意地悪なのかと切なくなってしまいます。
ようやく再開され、少しのウォームアップを経てついに始まったセカンドラン。アジア選手権の後に公言していたニュートリック「720タックノーハンドtoターンダウン」も披露され、LIVE配信のMCもため息まじりに「ビューティフル」と言ってしまうほどの美しさ。そして、ファーストランでミスした場面で出てきたのは、なんとバックフリップ”クアッド”バースピン(4回転)でした。予想の上を行く輪夢のライディングには尊敬の念しかありません。
最終順位は2.03ポイントというほんの少しの差で4位。表彰台に一歩及ばずだったのは悔しいですが、一桁代のライダーは誰が表彰台に立ってもおかしくないくらいのハイレベルなバトルでした。
楓がトリプルバースピンを大会初メイク!と思ったらその上を行くクアッドバースピンが出てきてしまう。こんな最高の先輩がいる日本のライダーはこれからも進化して行くこと間違いなしですね。TEAM JAPANの未来に引き続き期待です!
BMX Freestyle Park Women 決勝リザルト
- ROBERTS Hannah USA (21) 91.04
- SUN Sibei CHN (18) 89.10
- ZHOU Huimin CHN (18) 87.90
- FAN Zihui CHN (18) 85.30
- ZHENG Qian CHN (19) 84.70
- DENG Yawen CHN (17) 82.30
- WORTHINGTON Charlotte GBR (27) 76.70
- VILLEGAS SERNA Queen COL (20) 73.20
- MICULYCOVA Iveta CZE (17) 72.60
- MULLER Kim Lea GER (21) 69.00
- PARDOE Sasha GBR (17) 63.60
PEREZ GRASSET Macarena CHI (26) DNS
BMX Freestyle Park Men 決勝リザルト
- REILLY Kieran GBR (22) 95.80
- MARTIN Logan AUS (29) 95.30
- BRUCE Nick USA (31) 93.90
- NAKAMURA Rimu JPN (21) 91.87
- RANTES Marin CRO (27) 90.64
- JONES Jude GBR (22) 90.10
- DOWELL Justin USA (23) 89.74
- SANDOVAL Daniel USA (29) 89.36
- TORRES GIL Jose ARG (28) 89.20
- BATISTA de OLIVEIRA Gust. BRA (20) 85.30
- THIEM Jacob USA (22) 79.24
- WHALEY Jeffrey CAN (27) 77.80
- ZEBOLDS Ernests LAT (24) 77.20
- DHERS Daniel VEN (38) 75.50
- OZAWA Kaede JPN (15) 74.20
- CLEMENS Tom GER (18) 73.10
- SCHULZE Timo GER (25) 71.80
- JONES James GBR (29) 70.66
- MATTHEWS Joshua AUS (26) 66.90
- BROOKS Declan GBR (27) 66.06
- TRYON Bryce USA (23) 64.00
- PERAZA GARCIA Kevin MEX (28) 58.20
- GORNALL Shaun GBR (28) 56.40
- JEANJEAN Anthony FRA (25) 36.60
TEAM JAPAN リザルト
BMX フリースタイル・パーク男子
4 位 中村輪夢(なかむら りむ / 21 歳 / 京都市 / ウイングアーク 1st)
15 位 小澤楓(おざわかえで / 15 歳 / 岐阜県 / 岐阜第一高等学校) ※自己最高順位
(以下予選)
34 位 溝垣丈司(みぞがき じょうじ / 17 歳 / 神奈川県 / 湘南工科大学附属高等学校)
53 位 寺林昌輝(てらばやし まさき / 15 歳 / 神奈川県 / 第一学院高等学校)
54 位 大和晴彦(おわ はるひこ/21 歳 / 神奈川県 / デサント)
BMX フリースタイル・パーク女子
(予選順位)
16 位 内藤寧々(ないとうねね / 17 歳 / 神奈川県 / 第一学院高等学校)
大会詳細
2023 UCI CYCLING WORLD CHAMPIONSHIPS(UCI 自転車競技世界選手権)
https://www.cyclingworldchamps.com/championships/bmx-freestyle-park/